米国大型株指数の構成変更と次期採用候補分析

S&P500 2026年9月8日現在

本報告書は、2026年3月15日から9月8日までに発効したS&P500の構成変更と、公表済みの今後の変更を整理し、主要未採用企業9社の利益条件を比較します。財務情報の基準日は9月8日、時価総額の参考計算に用いる株価は9月4日終値です。

採用条件と指数運営

会社規模

会社全体の時価総額が227億ドル以上

浮動株

IWFが0.10以上。浮動株調整後時価総額が113.5億ドル以上

利益

継続事業のGAAP純利益が最新四半期・直近4四半期合計でともに黒字

流動性・上場

FALRが0.75以上。直近6カ月の月間出来高25万株以上。適格取引所で12カ月以上の取引実績

構成銘柄変更は随時実施されます。四半期リバランスは主に株式数・IWFの更新機会であり、全構成企業を定期再選定する制度ではありません。既存構成銘柄が規模基準を下回っても自動除外はなく、基準充足から採用までの固定的な順番や期限も定められていません。S&P DJIは2026年6月4日の協議で、大型IPOの早期採用制度を導入しないことを決定しました。

構成変更の実績(2026年3月〜8月)

9月21日付の変更予定と採用銘柄の特徴

9月21日付 追加予定(2026年9月4日発表)

  • ブルーム・エナジー BE/資本財
  • イルミナ ILMN/ヘルスケア(中型株400から移行)
  • エバーピュア P/情報技術(中型株400から移行)

除外予定

  • モルソン・クアーズ TAP/生活必需品
  • ザ・トレード・デスク TTD/通信
  • ビルダーズ・ファーストソース BLDR/資本財

採用銘柄の事業構成

対象期間の追加銘柄には、データセンター関連設備・部品、半導体、航空宇宙、電源などの企業が複数含まれます。一方、生活必需品などから小型株600への移行もありました。

定期変更の発表は市場規模の代表性、臨時変更は買収・事業分離などの具体的事由に即して読む必要があります。委員会が特定の成長テーマを優先したことまでを示すものではありません。

主要未採用企業9社の利益条件比較

金額は百万米ドル。TTMは各社の最新開示四半期までの連続4四半期(会社間で終了日が異なります)。

「充足」は最新四半期とTTMの利益条件に限ります。IWF・浮動株調整後時価総額・流動性などを含む正式な採用適格性や委員会の選定を示すものではありません。

利益条件を満たさない4社の詳細

スノーフレイク SNOW

製品売上高は前年同期比37%増の約14.919億ドルと成長しましたが、GAAP営業損失262.967百万ドル、純損失191.720百万ドル。株式報酬等の費用456.363百万ドルは売上高の約29.5%に相当します。

アトラシアン TEAM

最新四半期は黒字(139.076百万ドル)ですが、TTMは赤字(−53.828百万ドル)。利益条件の両方を同時に満たしていません。

ゼットスケーラー ZS

最新四半期・通期ともに赤字。2026年6月のNasdaq100からの除外は、S&P500の利益判定とは別の指数上の事象として位置づけます。

ストラテジー MSTR

デジタル資産の未実現評価損8,315.365百万ドルなどにより最新四半期は大幅赤字。TTMも−30,413.926百万ドルと赤字であり、通常の新規採用における利益条件を満たしません。

利益条件を満たす5社の事業と留意点

モンゴDB MDB

FY27 Q2売上高771.773百万ドル、純利益40.940百万ドル。Atlas売上高565.916百万ドル。TTM純利益58.897百万ドルの黒字ですが、利益条件の維持は今後の費用推移に左右されます。

アステラ・ラボ ALAB

PCIe/CXL関連半導体を展開。2026 Q2売上高前年比104%増の392.400百万ドル、純利益153.088百万ドル。TTM369.494百万ドルの黒字。四半期の法人税利益50.263百万ドルは純利益の約32.8%に相当し、税効果の継続性評価が必要です。

シェニエール・エナジー LNG

LNG輸出事業。2026 Q2売上高5,732百万ドル、純利益3,068百万ドル。TTM2,917百万ドルの黒字。デリバティブ未実現評価損益がGAAP利益を大きく変動させる点に留意が必要です。

アレス・マネジメント ARES

AUM6,713億ドル。2026 Q2親会社帰属GAAP純利益150.635百万ドル、TTM636.354百万ドルの黒字。FRE491.1百万ドルは非GAAP指標として区別します。

ハイコ HEI

航空機交換部品・電子機器事業。FY26 Q3売上高1,413.050百万ドル、純利益235.439百万ドル。TTM847.724百万ドルの黒字。普通株HEIとクラスA株HEI.Aで株価・議決権が異なるため、クラスごとの確認が必要です。

TTM純利益の算定根拠

期中決算の企業はTTM=A(前期通期)−B(前期累計)+C(当期累計)で算定します。単位は百万米ドル。

TEAMは2026年6月期通期純損失53.828百万ドル、ZSは2026年7月期通期純損失63.179百万ドルがそのまま最新TTMに相当します。LNGは当期上期が赤字でも最新四半期とTTMは黒字です。ARESの636.354百万ドルは親会社帰属GAAP純利益であり、FREとは異なります。

候補企業の規模と今後の選定における焦点

参考時価総額(2026年9月4日終値ベース)

上表の参考計算額はいずれも227億ドルを上回ります。ただし、指数で用いる評価日時点の株式数やIWFを反映した判定ではありません。

今後の選定における主な確認事項

  • 利益条件の継続的な維持
  • 評価日時点の会社規模・IWF
  • 証券別の浮動株調整後時価総額
  • 年間流動性および直近6カ月の月間出来高
  • 税効果・デリバティブ評価損益・株式報酬の継続性

エネルギーではTPL(2024年11月)、EXE(2025年3月)のS&P500採用が先例として確認できますが、特定セクターの追加枠や将来の順番を示すものではありません。

まとめと結論

1

対象期間の構成変更は12社の追加

2026年3月〜8月に12社が採用。買収・スピンオフ・四半期リバランスが主な変更事由。9月21日付でBE・ILMN・Pの3社追加が発表済みです。

2

利益条件を満たす5社を確認

MDB・ALAB・LNG・ARES・HEIは、最新四半期とTTMのGAAP純利益がともに黒字です。SNOW・ZS・MSTRは両方未達、TEAMはTTM未達です。

3

採用の時期と可否は委員会の判断に依存

利益条件の充足はあくまで一要件です。IWF・浮動株調整後時価総額・流動性・指数全体の代表性を踏まえた委員会の総合判断が採用を決定します。基準充足から採用までの固定的な順番や期限は定められていません。